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2022年8月13日 (土)

こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界

<今日は森理事からのレポートをお届けします>

「こぐまちゃん」シリーズなどでおなじみのわかやまけんさんの世界をじっくり味わってきました。

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世田谷美術館で開催中

●紙芝居でデビュー、そして絵本、さらに詩集
わかやまさんといえば「絵本」と思っていましたが、デビュー作は『クリスマスおめでとう』(1957年 童心社)という紙芝居でした。その後、多彩な絵本作品を手がけるとともに、詩への関心も高く、高田敏子が主催する野火の会の詩誌『野火』にイラストを描き、わかやまさん自身も詩集を出したのでした。
また、大泉に地域図書館をつくる会の代表を務め、作品づくりにとどまらず、絵本を読む場、出会う場づくりに力を注いだことがわかります。
「ラオスのこども」がラオスで行った絵本づくりセミナーの講師をわかやまさんにお願いしたのが1995年でした。「子どもが初めて出会う絵本」というテーマでのお話、そしてセミナー会場の庭にある大木を見上げて「大きな木があることは豊かな文化があることです」と語っていたことが思い出されました。

●色の秘密
「こぐまちゃん」が生まれたのは1970年、「日本の子どもたちが初めて出会う絵本」をつくろうと、わかやまけん、わだよしおみ(劇作家、絵本作家)、森比佐志(元は歌人、『はらぺこあおむし』の翻訳も)、こぐま社の佐藤英和社長の4人で想いを語り合い、子どもの遊びを自分たちでやってみたりして、当時2歳のわかやまさんのお子さんを重ねながら誕生しました。
シリーズで子どもたちに一番人気なのが『しろくまちゃんのほっとけーき』。ホットケーキを食べる場面が大きく展示されていました。
「なにで色ぬったの? あんなにきれいにぬれないでしょ?」
と、その絵の前に立っていた幼稚園児くらい女の子が、おかあさんに聞いていました。
まさにその展示は、色の「秘密」を解き明かすものでした。一般的なカラー印刷は青・赤・黄・黒の4つのインクを掛け合わせて色合いを再現しますが、それでは求める色が出ないとき、「特色」を使います。わかやまさんはこのシリーズで6色(スミ・アイ・グレー・ミドリ・オレンジ・キイロ)の特色を使い、1枚の絵につき6枚の特色原画を描き分けていたから「あんなにきれいにぬれた」のでした。リトグラフの説明の動画もあり、色をいくつも重ねてホットケーキの茶色になっていくのがわかりました。

●子どもたちの声に応えて絵を変更
また、わかやまさんのこだわりの一つが「純絵本」でした。
以前雑誌で、別の作家が「じゃあ、ぼくらがつくってるのは不純絵本ってことか(笑)」と言っているのを読みましたが、わかやまさんが提唱する純絵本とは、言葉が主となるのではなく、絵の力でおはなしを伝える絵本です。子どもたちは、おとなたちの想像を超えて絵を読んでいるのです。
『しろくまちゃんのほっとけーき』は、ホットケーキがだんだん焼けていく様子を、フライパンを12個描いて見せているページがあります。11個めで焼き上がり、12個めは空のフライパン。「あぶらを ひいて」という言葉を添え、もう1枚、焼くための絵でした。
が、子どもたちは、
「やっとやけて、たべようとおもったら、フライパンからきえちゃった!」
と残念がったのでした。
今、本屋さんに並んでいる『しろくまちゃんのほっとけーき』は、「はい できあがり」と、お皿にホットケーキが乗った絵になっています。

と、いろいろ発見したり、深くうなづいたり、「ラオスのこども」がめざしていることにヒントをくれるわかやまさんの作品展でした。9月4日まで開催中です(月曜休館)。→詳しくはコチラ

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(グッズ買いました)

●『文字絵本』『数字絵本』
わかやまさんは2015年に亡くなりました。わかやまさんは「1995年3月の絵本ゼミはラオスの近代絵本の日として記憶されるだろう」(「ラオスの子供に絵本を送る会通信」No.6_1995.11)と綴っています。このときの作品は『文字絵本』『数字絵本』として出版し、今では8万部がラオス全国の学校図書室に置かれ、子どもたちに愛されています。そしてこのほど、約11,000部を増刷しました。日本で和訳付きの絵本も販売中です。どうぞ、お求めください。→ご購入はコチラから

【森 透/ラオスのこども 理事】

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